
魔曲伝説は、本当だった。
そう言わざるを得ない、今年の甲子園決勝でした。
決勝戦、8回表。
健大高崎が待望のホームランを放ち、3-2と勝ち越します。
その裏の智弁和歌山の攻撃。
先頭バッターがデッドボールで出塁。
来るか。
来るのか。
もしかして……。
そんな空気が、甲子園全体を包み始めます。
大歓声の中、テレビ中継の奥から、どことなく軽快なドラムのリズムが聞こえてくる。
そして、その後ろから、管楽器の地鳴りのような低音が響いてくる。
来ました。
智弁和歌山、大応援団の「ジョックロック」です。
うねります。
うねります。
アルプススタンドの大きな人文字、「C」が、まるで生き物のようにうねっている。
応援団のボルテージも、どんどん上がっていく。
そして、そこからがもう……。
言葉では、なかなか言い表せません。
まさか。
またなのか。
また、ジョックロックなのか。
そして、またしても起こった大逆転劇。
智弁和歌山がそのまま逃げ切り、優勝。
やはり、魔曲伝説は本物でした。
そう言わざるを得ない。
テレビの前で見ていただけなのに、鳥肌が立ちました。
健大高崎も本当に強かった。
最後までどちらに転ぶかわからない、素晴らしい決勝戦でした。
感動をありがとうございます。
選手の皆さん、本当にお疲れ様でした。

そして、今年もたくさんの感動をいただいた甲子園が終わりました。
毎年のことなのですが、甲子園が終わると、少し寂しい。
今年も終わってしまったな、と。
ただ、私の場合、甲子園の楽しみは野球だけではありません。
いや、もしかしたら、野球と同じくらい。
あるいは、それ以上に楽しみにしているものがあります。
それが、応援です。
特に、ブラスバンド。
甲子園では、選手たちのプレーと同時に、アルプススタンドから聞こえてくる音楽も楽しんでいます。
学校ごとに定番曲があり、伝統があり、地域ごとの特色がある。
同じ曲でもアレンジが違ったり、テンポが違ったりする。
そして、時には「魔曲」と呼ばれるような、とんでもない力を持った曲まで出てくる。
野球を見る。
応援を見る。
そして、音を聴く。
私にとって甲子園は、そんなふうにいろいろな角度から楽しめる場所なのです。
ということで、今年の甲子園で特に印象に残った応援を、少しだけ振り返っておこうと思います。
まずは、やっぱり智弁和歌山の「ジョックロック」。
これはもう、言わずもがなですね。
今年も炸裂しました。
特に決勝のあの場面。
「この曲が来た」というだけで、こちらまで何かが起こるような気持ちにさせられる。
音楽には、そういう力があります。
もちろん、実際に打ったのは選手たちです。
でも、あの場面で球場全体の空気を一変させたジョックロックの存在感は、やはりすごかった。
まさに魔曲です。
そして、もうひとつ強烈に印象に残ったのが、
天理高校の「天理ワッショイ」。
天理高校の応援といえば、誰もが知っている定番ですよね。
ブラスバンドのメロディーが流れ、その後に「ワッショイ!」という掛け声が入る。
普通、応援というものは、盛り上がってくるとテンポもどんどん速くなっていくものです。
人間の気持ちが高ぶると、自然と身体も前のめりになる。
ところが、今年の天理ワッショイは、まさかの超スローバージョン。
とにかく遅い。
体感ではBPM60を下回っている。
55くらいなんじゃないかと思うほどでした。
でも、それがものすごくカッコいい。
テンポを落とすことで、逆に音の一発一発が重くなる。
「ワッショイ!」の掛け声にも、とんでもない圧力が生まれる。
速くして盛り上げるのではなく、あえて遅くして、重くする。
これも音楽の面白さですよね。
そして、拓大紅陵。
仙台育英の対戦相手だったので、もちろん試合も見ていたのですが、正直に言うと、最初はブラスバンドにはそれほど注目していませんでした。
ところが、聴いてみると、これがカッコいい。
しかも、一般的な高校野球応援ではあまり耳にしないような曲を選んでくる。
「この曲を高校野球の応援でやるのか」
という選曲が、なかなか面白い。
気になって調べてみると、千葉県は野球応援のブラスバンド文化がとても根強い地域なんですね。
習志野高校や柏高校など、吹奏楽の強豪校も多い。
なるほど。
そう考えると、拓大紅陵のあの応援にも納得です。
野球だけではなく、地域全体に根付いた吹奏楽文化がある。
そういう背景を知ってから聴くと、また違って聞こえてきます。
そして、岡山学芸館。
今年、出場していましたね。
ここに関しては、もう野球以上にブラスバンドを楽しみにしていたと言ってもいいくらいです。
全国吹奏楽コンクールの常連校ということもあり、とにかく演奏が素敵でした。
音の厚みだったり、まとまりだったり、選曲だったり。
「野球応援として聴く」のと同時に、「ひとつの吹奏楽団の演奏として聴く」という楽しみ方もできる。

甲子園には、本当にいろいろな音があります。
もちろん、まだまだ書きたい学校はたくさんあります。
聴いていて「おっ」と思った応援もたくさんありました。
ただ、全部書き始めると本当にキリがないので、今年はこの辺にしておきます。
それにしても、楽しかった。
今年も野球そのものはもちろん、応援、ブラスバンド、アルプススタンドの雰囲気まで含めて、たくさん楽しませてもらいました。
選手たちの全力プレー。
それを支える応援団。
ブラスバンド。
アルプススタンド。
そして、球場全体に響き渡る歓声。
甲子園という場所には、野球だけではない、いろいろな「音」があります。
私は音楽をやっている人間だからなのかもしれませんが、そこにも強く惹かれます。
今年もたくさんの素晴らしい試合と、たくさんの素晴らしい音をありがとうございました。
選手の皆さん、応援団の皆さん、ブラスバンドの皆さん、そして大会に関わったすべての皆さん、本当にお疲れ様でした。
そして、また来年。
どんなチームが出てくるのか。
どんなドラマが生まれるのか。
そして、どんな音楽が甲子園を包むのか。
今から楽しみにしています。
できれば来年も、またひとつくらい「魔曲伝説」が生まれてくれたら嬉しい。
そんなことを思いながら、今年の夏を締めくくりたいと思います。
ありがとう、甲子園。
また来年。
※ この記録は「音のある日常」として残しています。








